ゆるふわクオンツの日常

マリアバン解析トレーニング

さて、今回はMalliavin Calculusの計算練習をしてみたいと思います!

細かな数学的な背景はさておき、D_{s}=\frac{\partial}{\partial dW_{s}}くらいの軽いノリ(時刻s時点のブラウン運動をちょびっと変化させた的な)で始めていきたいと思います。

基本方針

基本的には以下の内容をまずは丸覚えして、後から納得していけばいいのではないかと思います.

F=f(\int_{0}^{T} h(u) dW_{u})(ウィーナー汎関数)が与えられた時,
その確率変数Fのマリアバン微分D_{t}F=f'(\int_{0}^{T} h(u) dW_{u})h(t)となる.

上記の関係式を駆使して計算トレーニングをしていきます(トレーニングということもあり,見ていく関係式はほぼ重複に近いものもあるやや冗長なものになっています^^;).

  • s \le tとしてD_{s}W_{t}=1.
    ① これは上の公式に当てはめるとF=\int_{0}^{t} dW_{u}ですね.
    上の書き方に当てはめるとf(x)=xh(t)=1のケースとみなすとわかりやすい.
     W_{t} W_{t} = dW_{t_{0}} + dW_{t_{1}} + ... + dW_{t_{n-1}}  + dW_{t_{n}=s} + dW_{t_{n+1}}  + ... と見ると、
    両辺にマリアバン微分D_{s}=\frac{\partial}{\partial dW_{s}}を施すと D_{s}W_{t} = 0 + 0 + ... + 0 + 1 + 0 + ...となる感じですね.

  • s \le tとしてD_{s}f(W_{t})=f'(W_{t}).
    公式に当てはめると h(t)=1の時ですね.

  • s > t'としてD_{s}W_{t'}=0.
    ① 公式に当てはめると f(x)=x, h(t)=1ですね.
    D_{s}=\frac{\partial}{\partial dW_{s}}dW_{s}の微小変化による影響を見ることになるので,
    それよりも前の時点のt'には影響がないというイメージですね.

  • s \le tとしてD_{s}(W_{t}-W_{s})=0.

  • s \le TとしてD_{s}(\int_{0}^{T} h(u) dW_{u})=h(s)
    ① 公式に当てはめると f(x)=xですね.
    ② 左辺はD_{s} (h(u) dW_{u})を積み上げて(積分して)いったものなので,
    基本的にはD_{s} (h(u) dW_{u})= h(u)( D_{s}dW_{u})という風に小分けにしてを考えます.
    h(u)( D_{s}dW_{u})s=uの時以外は0で,s=uの時のみh(s)を取ることがわかります.
    つまり、h(u)( D_{s}dW_{u})を足し合わせたようなものであるD_{s}(\int_{0}^{T} h(u) dW_{u})
    0+0+...+h(s)+...で上記の関係式が成立するということですね.

  • s \le TとしてD_{s}(\int_{0}^{T} h(u) dW_{u})^{n}=n h(s)(\int_{0}^{T} h(u) dW_{u})^{n-1}
    これは, f(x)=x^{n}と見なせば行けそうですね.

マリアバン微分における積の法則

D_{t}X_{1}X_{2}=(D_{t}X_{1})X_{2}+(D_{t}X_{2})X_{1}

  • s \le TとしてD_{s}(\int_{0}^{T} g(W_{u}) dW_{u})=\int_{s}^{T} g'(W_{u}) dW_{u}+g(W_{s})
    左辺をD_{s}g(W_{u}) dW_{u}の積み上げとみて,
    積の法則を適用するとD_{s}g(W_{u}) dW_{u}=(D_{s}g(W_{u}))dW_{u}+g(W_{u})(D_{s}dW_{u})となります.
    第一項はs \le uにおいてg'(W_{u})となり,第二項はs=uの時のみg(W_{s})となります.

ここで積の法則に加えて,もう一つ合成関数版のマリアバン微分について記載します。

D_{t}g(X)=g'(X)D_{t}X

これがあれば, 上から二つ目のD_{s}f(W_{t})=f'(W_{t})なんかはかなり見通しがよくなりますね。

  • s \le t \le uとしてD_{s}D_{t}W_{u}^3=6W_{u}.

  •  S_{T} = S_{0}exp(\mu T+\sigma W(T))に対し、時刻 tにおけるマリアバン微分 D_{t}S_{T}を考える.
    合成関数のマリアバン微分を念頭におけば、 D_{t}S_{T}= \sigma S_{T} D_{t} W(T) = \sigma S_{T}とわかる.

とまぁこんな感じで,とりあえずブラウン運動方向の微分ことマリアバン微分が計算自体は案外シンプルだと理解できたあたりで今日はこの辺で。 (まぁマリアバン微分できて嬉しい局面、グリークスの計算以外での応用例みたことないのですが)

今回の関連書籍

以下の三冊あたりは結構有名な気がします。和書は残念ながらとっつきにくいのが多いです。